ブレインダイブで有名なマジシャンの新子景視(あたらしけいし)さんが、1月23日にテレビ朝日で放送された「出川一茂ホラン☆フシギの会」という番組でマジックを披露していました。この回では、出川哲朗さん、長嶋一茂さん、ホラン千秋さんが観客をされていました。新子さんは、時間・空間を操る「メタマジック」という触れ込みで、7つほどマジックを披露していたので、種明かしの考察なども含めて、感想を書いてみたいと思います。
ブレインダイブについての記事もありますので、興味のある方は合わせてご覧ください。
Contents
マジック1:記憶力のテスト
現象
- ホラン千秋さんがクラブのAを持ちます。
- 新子さんがスペードのAとクラブのAを入れ替える仕草をします。
- 出川さんに1から10までの間で、好きな数字を答えてもらいます(7を選択)。
- 新子さんが、ホラン千秋さんに、カードの位置と数字を覚えているか尋ねます。
- マークはクラブとスペードですが、カードの数字が、出川さんの答えた7になっています。
種明かし(考察)
カードの変化に分類される現象です。ダブルリフトやトップチェンジ等でカードをスイッチしてる様子があったので、そこでカードをスペードの7とクラブの7にしたのだと思います。出川さんの数字の選択については、1から10の間ならば7は比較的選ばれやすいといえます。ジェスチャーによる暗示等も利用して、より選ばれやすくした可能性もあります。もちろんプロマジシャンなので、いくつかアウトを用意しているでしょうが、成功パターンに近い方のアウトだったのではないでしょうか。
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マジック2:覚えたカードをQが持っている
現象
- 新子さんが一茂さんにカードを弾いて見せ、1枚だけ覚えてもらいます(確かハートの2)。
- 新子さんが、ホラン千秋さんにカードを選んでもらいます。
- (演技とは関係ないですが、ホラン千秋さんが1枚のカードが思い浮かんだといい、ハートのQを答えていました。)
- 一茂さんがカード名(ハートの2)を答え、ホラン千秋さんのカードを見ると、スペードのQであり、違うカードです。
- しかし、新子さんが「彼女というのは、ホランさんではなく、クイーンの意味です。」と言って、Qをよく見ると、Qの絵が、手にハートの2を持っています。
種明かし(考察)
予言的な現象といえます。一茂さん、ホランさん、ともにフォースだと思います。一茂さんにフォースしたハートの2はマークが少なく、色が鮮やかで、高速で弾いても視認しやすいため、フォースするカードとしては適切です。おそらく、ハートの2でブレイクを取り、一瞬弾くのを止めたのだと思われます。デュプリケートを複数枚連続させる方法もありますが、カードの表を改めているため、その可能性は低いでしょう。
ホランさんへのフォースは確実性が高いものですが、一茂さんへのフォースはいささか不確実性が残るため、何らかのリカバリーを用意していたと推測されます。もしかすると、スペードのQや12という数字も、アウトの1つに組み込まれていたかもしれません。
ちなみに、途中でホランさんがハートのQが頭に浮かんだ、と仰っていました。ハートのQも、マークは一茂さんの選んだハート2と一致していますし、ホランさんが手に持ったスペードのQと数字が一致していますから、「実はホランさんの頭に浮かんだイメージは、あながち間違っているとは言えません。」みたいな展開もできたでしょう。メンタルマジックでは、こういう偶然を利用できると、より不可能性が増します。
マジック3:手の中に8のサインが移動
現象
- トランプを1枚選んでもらいます。
- 数字だけを使う、と言い、8の数字を新子さんの手に書きます。
- 8のサインを指でつまむと、手からサインが消えます。
- 一茂さんの手にサインを移すジェスチャーをすると、手の中にサインが移ります。
種明かし(考察)
移動現象です。8の数字はフォースだと思います。新子さんの手には、サインを消したり、剥がしたりできるようなギミックを仕込んでおいたのでしょう。一方、一茂さんのどちらかの手を選んでもらうパートは、マジシャンズチョイスかもしれません。このマジックに入る前を含めた演技中、彼の左手に触れた際、8のマークを手のひらに印字しておき、そちらの手をマジシャンズチョイスで選んでもらった、ということになります。
補足情報
Double Cross という商品で同様の現象が可能だという情報を得たので追記します(2024-02-28)1。
マジック4:選んだカードがパスケースやスマホの中に移動
現象
細かい手順の前後関係は忘れましたが、おおよそ、次のような感じだったと思います。
- パスケースをスマホで撮影します。
- カードを選んでもらいます。
- 選ばれたカードがパスケースの中に移動します。
- 別のカードを選んでもらいます。
- パスケースを広げますが、カードはありません。
- スマホの写真を見ると、パスケースの写真に選んだカードが映り込んでいます。
種明かし(考察)
2回ともカードはフォースでしょう。1回目のカードは、パスケースの中にデュプリケートを仕込んでおき、カバーを外すなり、異なるポケットを示すなりして、あたかも出現したように見せたのだと思います。また、2枚目のカードは、パスケースの中に、スマホで撮影した場合にカードが映るギミックを仕込んでおいたと考えられます。(調べてみたところ、例えば、テンヨーに魔法のフォトグラフという商品がありました。)
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マジック5:破れたカードとの交換
現象
トランスポジション現象です。
- カードAを選んでもらいます。
- デックの中ほどにカードAを入れます。
- 指を鳴らすと一番上に上がってくると言いながら、上がってきません。
- 一番上のカード(カードB)は4つに破ります。
- カードAをデックから探し出します。
- カードAを破れたカードBの上で振ると、位置が入れ替わり、カードBは復活し、カードAが4等分されます。
種明かし(考察)
カードAはフォースです。トップカードのカードBを破る際、ダブルリフト等のチェンジで実際はカードAを破ります。一方、カードAはデュプリケートが存在するので、デックの中のカードAを取り出します。カードAとトップ付近のカードBをチェンジし、カードBが復活し、カードAが破れたように見せます。
カードを破るのは抵抗がある方もいらっしゃるでしょうが、トランスポジションだけなら破る必要はないので、やってみるといいと思います。経験的に、トランスポジション現象はウケが良い気がします。現象がシンプルで、見ていて分かりやすいのでしょうか。
マジック6:破れたカードの復活
現象
トーンアンドレストアード(torn & restored)現象です。
- 4つに破いたトランプを手の中に入れます。
- 手の中のトランプがくっつき、4つ折りにされた状態に復活します。
種明かし(考察)
先の手順で、デュプリケートを使用していますから、その破れていないカードを4分の1にホールドし、手渡すときに破れた紙片とスイッチしたのでしょう。
マジック7:ハートのマークと選んだカードだけが残る
現象
- ダイヤの5にサインをし、デックに戻します。
- カードのマークを宣言してもらいます(ハート)。
- ハート以外のカードが徐々に消えます。
- デックを広げると、ハートのマークだけが一列にならんでおり、その中にサインしたダイヤの5があります。
種明かし(考察)
ダイヤの5は特にフォースする必要は無いと思います。サイン中などに、デックスイッチを行い、アンビリーシャスカードのようなギミックのデックを持ち出します。カードのマークの宣言については、ハートが選ばれなければ、それを取り除くようなセリフに転換するなどして帳尻を合わせていきます。選んだカードを適切な位置(ハートの5の隣)に差し込み、カードの厚みを徐々に減らしていき、ハートだけが残ったように見せます。パケットをスプレッドし、選んだカードを示して終わりです。
おまけのマジック:ブレインダイブで18を当てる
最後に、一茂さんが、勝手に書き足した数字を、新子さんが当てるブレインダイブを披露していましたね。手に書かれた数字は18だったのですが、見事的中させていました。
これについては、新子さんの表情を見る限り、少し考え込む様子があったので、即興だと思います。ただ、ヒントになるような点はいくつかあります。新子さんが後ろを向いている僅かな時間に、気づかれないように数字を書くということを、とっさに思いついたのであれば、単純な数字が書きやすく、数字の個数も多くないはずですから、1や0は可能性としてあり得ます。また、一茂さんは名前に「一」が含まれているので、案外そういう点もあなどれません。候補として、最初に1を挙げ、「最初に浮かんだ数字は18ですが…」と言って様子を見ることで、当たっていれば、そのようなリアクションが見られるので、そこで成功したように見せられます。仮に外したとしても、「18ですが、書き足した数字は2かもしれないし、3かもしれません。」などと適当に話を続け、様々な可能性を提示する中で反応を見て、候補を絞って当てるのではないでしょうか。もっとも、こういう事態に備えて、ネイルライターくらいは準備していたかもしれないですし、特に当たることがなければ、何もないただの会話として済ませたかもしれないです。真相は闇の中ですが、マジックはこういう様々な可能性を想像させてくれる点が楽しいですよね。
終わりに
新子景視さんのメタマジックやブレインダイブについて、種明かしの推測や考察を通し、振り返ってみました。やっぱりマジックを見るのは、色々と考えさせられるものがあって、とても楽しいですね。それに、他のマジシャンの演技を見ると、色々と勉強になる点が多いです。
観客視点で見てみると、カードを覚えるマジックは、かなり負担になると感じました。記憶を保持したまま、目の前の現象にも注意を向ける必要があるためです。当たることへの不思議さも薄れてきてしまうため、記憶を必要とするマジックは、せいぜい1-2個にとどめ、マジック全体の個数も多くて3個くらいにすると、疲れることなく楽しめる演技構成になりそうです。今後、手順を考える上で意識したいです。
テクニック的な面でいうと、ヒンズーシャッフルでボトムカードをフォースしていましたが、少しずつボトムを落として見えるカードを変えることで、カードが混ざっているように錯覚させるなど、面白い見せ方もありました。新子さんのマジックを真剣に見るのは、今回が初めてくらいなのですが、スリップフォースやダブルリフトなどのテクニックは、やはり汎用性が高いと感じました。
マジックの特番も久しぶりに見ました。この番組は催眠術やマジックなどをたまに取り上げるようなので、機会があればまた見てみたいです。
参考文献
- Xユーザーのマジックショップ「ストリートマジシャン」さん
https://twitter.com/StreetMagician_/status/1749951173090828573
ツイートを引用すると、「昨日の「出川一茂ホラン☆フシギの会」はご覧になりましたか?新子景視さんの次元を操る様々な「メタマジック」が凄かったですね。その中に、手に書いた「8」が長嶋 一茂の手に移動するというマジックがありましたが、同様の現象は『Double Cross』で可能です。」とのことです。 ↩︎